生成AIや仮想通貨のマイニングなどでGPUを使った機械学習も盛んになり、グラボの役割も多岐にわたるようになりました。
その影響か、一時期需要が増えて、需要が供給を上回る事になり、グラボの価格が高騰する自体となりました。
そんな状況に危機感を感じてか、GPUメーカーの最大手のNVIDIAはLHRという技術を導入して需給の安定を図りました。
そこで今回の記事では、グラボとLHRそして機械学習との関係についてわかりやすく解説します。
そもそもLHRとは何なの?
LHR(Lite Hash Rate)とは、グラフィックボード(GPU)の性能を制限する技術です。主に仮想通貨マイニングに利用されるのを防ぐ為に開発されました。
現在、NVIDIAの一部のGPUモデルでLHRが採用されおり、仮想通貨の価格変動による需要急増に対処し高くなりすぎたグラボを一般層のゲーマー向けに適正価格で提供する為に用いられた技術です。
以下は、NVIDIAのLHR対応GPUモデルの一例です。
- NVIDIA GeForce RTX 3060 LHR
- NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti LHR
- NVIDIA GeForce RTX 3080 LHR
- NVIDIA GeForce RTX 3070 LHR
これらのNVIDIA GeForce RTX 30シリーズのGPUは、仮想通貨マイニングにおいて、以前の非LHRバージョンと比べてハッシュレートが制限されていますが、ゲーム向けの動画演算などゲーマー向けの機能には一切影響がないので、パソコンゲームをメインに使う人にとっては恩恵が強い技術です。
機械学習におけるグラフィックボードの役割
グラボは、機械学習において重要な役割を果たしています。
その主な理由は、高性能の並列処理能力を持っているからで、機械学習アルゴリズムの高速な実行や大規模データの処理を可能にします。
実際のデータやベンチマークによると、単体のグラボを使用することで機械学習の効率が明らかに向上します。
機械学習は、生成AIなどがデータからパターンを学習し、予測や分類を行う技術です。
機械学習アルゴリズムは多くの演算を必要とし、特に深層学習モデル(ニューラルネットワーク)は非常に多くの演算を同時に実行します。これらの演算は多くのデータを同時に処理する必要があります。
グラボは、その設計がパソコンのメインCPUよりも並列処理に特化しており、演算の並列処理に優れています。
特にNVIDIAのCUDAプラットフォームを使用したGPUは、機械学習タスクにおいて高い性能を発揮します。
ちなみに、このおかげもあってかNVIDIAの業績や株価もあがり、今や世界を代表する半導体メーカーへとのし上がりました。
この性能は、一つのタスクを複数のコアで同時に処理することに秀でています。結果として、機械学習モデルのトレーニングや推論が大幅に高速化されます。
実例として、深層学習モデルのトレーニングや画像認識タスクにおいて、GPUを使用することで通常のCPUに比べて数十倍から数百倍もの高速化が実現されています。さらに、大規模データセットの処理や高次元の特徴抽出においても、高性能なGPU(グラボのメインチップとなるパーツ)を搭載したグラボは不可欠です。
LHR対応グラフィックボードでの機械学習
LHR対応グラフィックボードを使った機械学習には一定のメリットがありますが、デメリットも存在します。
メリットとデメリット
- メリットとしては、LHRにより価格が抑えられ、一般の人がグラボを入手しやすくなる。
- LHRで能力を制限する事で電気代も節約出来る
- デメリットとしては、LHRが機械学習の性能を制限するため、一部のタスクでは非LHRバージョンのグラフィックボードの方が優れていることがある
- 本当に機械学習の機能を使いたい人が、グラボの本来の力が発揮できず効率が悪くなる
現在はLHRはどうなってる?
LHRは2年前に導入された技術ですが、現在(2023年10月27日現在)ではNVIDIA公式が2022年10月12日に公開した522.25ドライバーで解除が出来るようになっています。
これには、NVIDIAが中古市場に大量のGPUが流入するのを防ぐ事で、GPUの値崩れを防止したいとか、そもそもイーサリアム(仮想通貨の一つ)マイニング(仮想通貨を採掘する事)のブームが落ち着いたという理由もあるのかもしれません。
LHRとグラボによる機械学習についてのよくある質問
Q1: LHR対応グラフィックボードと通常のグラフィックボードの違いは何ですか?
A1: LHR(Lite Hash Rate)対応グラフィックボードは、仮想通貨マイニング時のハッシュレートを制限する技術を採用しています。
これにより、仮想通貨でマイニングする人が高性能なGPUを利用しにくくなり、ゲーマーや機械学習プロジェクト向けに提供されることが増えます。
通常のグラボに比べて価格が抑えられ、供給が改善されるのが主な違いです。
Q2: LHR対応グラフィックボードを使った機械学習において、性能制限はどの程度影響するのですか?
A2: LHR対応グラフィックボードを機械学習に使用する場合、性能制限はタスクにより異なります。
マイニングなどのタスクでは性能制限が大きな影響を及ぼすことがありますが、ゲームや機械学習などのタスクでは制約がほとんど無く影響はありません。
もっとも現在は最新のドライバに更新する事で、LHRは解除されるので現在では影響は皆無と言えます。
まとめ
LHRは過度なマイニングによる、需要爆発に対処する為に作られた技術ですが、前述の通り現在はマイニングブームも落ち着きLHRをかける理由が無くなった事もあり、LHRは最新のNVIDIAのドライバに更新すればLHRの機能解除が出来ます。
したがって、今では購入したグラボのGPUがGeForce RTX 30シリーズだったとしてもそこまで気にする必要は無いでしょう。